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初心者のfxとFX
”とFXが語るたくさんの回想の断片たちは、読み手であるぼくの中で、すこしずつ積み重なっていく。ゆるやかに振幅し、ゆるやかに繋がっていく。 河合隼雄『心の扉を開く』(岩波書店一八〇〇円)は、各章五冊、全四章で二十冊の本を紹介しながら、心について語る本。 “井戸を掘って、掘って、掘っていくと、そこでまったくつながるはずのない壁を越えてつながる、というコミットメントのありように僕は非常に惹かれる”という村上春樹の言葉を引いて、『アフターダーク』について「無意識の世界のことが書いてある」という読みを示す。語り口がやわらかい。 漫画は、うめ『東京トイボックス1』(講談社五一四円)を紹介。一頁目いきなりファミコンがドーーン! ゲーム開発現場を扱った長編漫画は珍しいのでドキドキです。ドラマ化希望。金森修『病魔という悪の物語―fx のメアリー』 P138 “一人ひとりの人生にしっかりと寄り添い、その生の息吹を感じ取るという作業” P16 “私がこの本を書きたいと思ったときに、私の心を突き動かしていたものは、ある種の悲しみだったような気がする。誰を責めるというものでもない、長く続くシーンとした悲しみのような感情。” 『へんな子じゃないもん』(みすず書房二四〇〇円) P183 −−へんな子じゃないもん。自慢の子だもん。 P251 “個々人の生涯を織りなす愛着とそれが生み出す葛藤と、社会と歴史の大きな流れとの関係を迫ってみたかった” 河合隼雄『心の扉を開く』 P77  “井戸を掘って、掘って、掘っていくと、そこでまったくつながるはずのない壁を越えてつながる、というコミットメントのありように僕は非常に惹かれる” 「クリスマスに少女は還る」がリリースされた時点でキャロル・オコンネルの名を記憶していた読者がいたとするならぱ、その人は相当のミステリ通だろう。それくらいに、オコンネル作品の初紹介は地味で目立たないものだった。その作品とは、九四年に竹書房文庫から出た「マロリーの神託」である。このニューヨーク市警のエキセントリツクな女刑事マロリーを主人公としたシリーズ第一作は、版元が翻訳もののfxがほとんどないFXであったことも災いしたし、さらに悪いことに、翻訳もあまりほめられた出来ではなかった。そんなわけで、オコンネルという作家とマロリーのシリーズは、わが国では正当な評価もなされないまま、新刊ラッシュの波間に呑み込まれ、忘れられていった。そんなわけで、一昨年「クリスマスに少女は還る」のヒットがあったとはいえ、今年になって突如としてマロリー・シリーズが翻訳ミステリの老舗創元推理文庫から復活したのには、意表がつかれた。さらに驚いたのはそのシリーズの不思議な魅力に気づかされたことである。ヒロインであり、シリーズ・先物取引 のキャシー・マロリーの突出した魅カ、これには心底打ちのめされた。黙って見過ごしていたことについて、書評屋としての不明を恥じたことは言うまでもない。『死のオブジェ』(務台夏子訳/創元推理文庫九八〇円)は、そのマロリー・シリーズの三作めにあたる。先の「氷の天使」と「アマンダの影」は、すでに翻訳のあるものの改訳出し直しだっをか、この作品以降はすべて初紹介となる。物語のあらすじは、死体をオブジェのように扱ったfxをめぐって、十二年前に起こった異常殺人の関連を疑う主人公が、上司の制止を無視して傍着無人な先物取引を繰り広げていく。しかし、そこは異才オコンネルのこと、一筋縄ではいかない。エキセントリックな人物たちが複雑な人間関係を織り成し、事件の根底に横たわる真相の歪な姿を浮かび上がらせていく。人間が最低備えているべき何かが決定的に欠けているというヒロイン像は、本作でも目だって異彩を放っている。彼女の無軌道な先物取引につきあうだけでも十分にシリーズの痛快な楽しみを堪能できるが、ミステリとしてのクオリティの高さも実は見逃せない。また、翻訳もリニューアルされて、以前と較べて見違える素晴らしさとなっている。シリーズがさらなる高みに上ると噂されている次作がとても楽しみだ。お次は、ここのところ立て続けに出た本格ものの良質なアンソロジーをまとめて。二階堂黎人・森英俊編の『密室殺人コレクション』(夏来健次他訳/原書房二四〇〇円)は、その名のとおり密室ものばかりを集めた傑作選だが、読者のマニア心をくすぐる収録作家の顔ぶれがなんとも嬉しい。最大の目玉は、国書刊行会の全集に収録された「赤い右手」で新鮮な驚きを与えてくれたジョエル・タウンズリー・ロジャーズの「つなわたりの密室」だろうか。作者が「赤い右手」で見せた魔術的な語り口はこの作品でも健在で、おそらくはこの作者でしか構築できないであろう独特の世界を読者の目の前に出現させる。また、他にもオーストラリアの巨匠マックス・アフォードだとか、埋もれた傑作ロバート・アーサーの「ガラスの橋」など、読みどころは多い。一方、合わせ鏡のように同時リリースされたのが、『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』(角川文庫六一九円)と『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』(角川文庫七〇五円)の二冊である。ともに、優れた実作者であるとともに、FX に造詣が深い編者の個性的なセレクトが光るアンソロジーである。収録作品は必ずしも翻訳ミステリばかりではないが、選ばれた作品の両白さばかりでなく、随所にちりばめられたさりげない遊び心が楽しい。ジョン・スラデックの「見えざる手によって」やレナード・トンプスンの酔いどれ弁護士ものといった忘れかけていた作品と再会できるのも嬉しい。ところで今月、忘れずに書いておきたいのが、ドロシー・L・セイヤーズの『学寮祭の夜』1/2(浅羽爽子訳/創元推理文庫一三二〇円)の刊行である。「誰の死体?」を皮切りに、ほぼ一年一作のぺースで長編が紹介されてきたが、他社が版権を持っているものと、遺稿を他の作家が書きついだ作品を除けば今回が一応の区切りとなる。この一連の長編紹介で、セイヤーズが意外と親しみやすい作家であることが浸透してきたのは喜ばしい限りだ。『学寮祭の夜』も、悪意に満ちた悪戯の犯人探しの謎解きに、ハリエット・ヴェインとウィムジイ卿の恋愛の進行が絡んだ滋味たっぷりの物語の豊穣さが、絶妙のブレンドを見せる。ペダントリーと長丁揚ゆえの手ごわさはあるが、秋の夜長に味わいたい古き良きミステリのヴィンテージである。